季刊地理学
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研究ノート
タイにおける国内人口移動の空間的パターンとその変化
—NESDBのデータを用いて—
丹羽 孝仁
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2010 年 62 巻 2 号 p. 83-92

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抄録

本稿はタイを対象とし,タイ国家経済社会開発局(NESDB)の都県間純人口移動の統計データの分析から,工業化が急速に進展した1980年代以降から2000年代半ばまでの国内人口移動の空間的パターンとその変化を明らかにした。 地域間の人口移動においては,北部や東北部が恒常的に他地域への人口流出地域となっており,その主たる移動先はバンコク都市圏(BMR)であった。他方でBMR近郊の県を中心に東部や中部においても人口流入数が大きく増加していた。すなわち,バンコクの都市域はBMRから外縁部へ拡大し,拡大バンコク都市圏(EBMR)を形成していることが人口移動の特徴として指摘できる。しかしながら今なお,都県間純人口移動の第1位の流出超過がバンコク都へ向けられたもので,バンコク一極集中は変化しておらず,バンコクの優位性が継続していることが明らかとなった。また,地域中心性を有する県の存在が確認されたが,人口吸引力はバンコク都に比べ非常に小さいものであった。

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© 2010 東北地理学会
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