地質学雑誌
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論説
紀伊半島中央部,宮ノ谷複合岩脈の産状から推定されるマグマ混合及びカルデラとの関係
高島 紫野和田 穣隆新正 裕尚
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2010 年 116 巻 9 号 p. 496-509

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抄録

紀伊半島中央部,三重県蓮峡の宮ノ谷複合岩脈についてマグマ混合および岩脈形成過程を検討した.岩脈は縁部を玄武岩質安山岩,中央部を流紋岩で構成され,両者の間に安山岩が挟在する.産状・岩石組織・全岩化学組成から,苦鉄質マグマは珪長質マグマ溜りへの注入後,より浅所へ貫入し苦鉄質岩脈を形成したと考えられる.一方,苦鉄質マグマは珪長質マグマとマグマ溜り上部から火道内で混合し中間質マグマの形成後,苦鉄質岩脈中へ貫入し複合岩脈を形成したと推定される.大台カルデラ周辺の複合岩脈群は火砕岩岩脈と並走し,両者の形成年代は一致する.火砕岩岩脈には苦鉄質・中間質の本質物質も含まれる.以上のことから複合岩脈と大台カルデラの形成に成因的関係が推定される.宮ノ谷岩脈の珪長質中心部と安山岩には浅所貫入した冷却途中の深成岩体に由来する花崗岩包有物が含まれ,複合岩脈とカルデラ形成の関係を理解する手がかりを与える可能性がある.

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© 2010 日本地質学会
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