2010 年 42 巻 10 号 p. 1323-1329
31歳, 女性. 39.2℃の発熱があり, その2カ月後より眼前暗黒感を伴う眩暈を主訴に近医を受診. 両側橈骨動脈が触知不能のため高安動脈炎が疑われ紹介. 精査目的で入院するも妊娠6週1日目であることが判明し, 造影剤を使用した検査は中止. WBC 10,540/µL, CRP 0.73mg/dL, 血沈69mm/1時と炎症反応が亢進し, 頸動脈エコーでは両側の総頸動脈内中膜肥厚, および胸部MRAで大動脈弓3分枝の狭窄が認められた. 症状, 血液生化学検査, および画像診断より高安動脈炎I型と診断した. プレドニゾロン30mg/日の内服開始に伴い, 眩暈の改善および橈骨動脈の触知を認め外来加療とした. CRPと血沈を指標に外来でプレドニゾロンを漸減し, 継続加療を行った. 妊娠経過中に胎児の発達に問題なく, 妊娠も正常に経過した. 本症例の高安動脈炎病期はgroup I, 新生児予後スコアーは0点であることより自然経膣分娩とし, 妊娠39週3日に体重3,010gの男児を無事出産した. 高安動脈炎は全国に約5,000人の罹患患者がいるが, 妊娠症例の報告は比較的少なく, 本疾患妊娠症例の診断・治療, 妊娠分娩時の管理などにつき考察を加える.