日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ(8)(9)
日本におけるがんトランスレーショナルリサーチの現状と課題
和田 智西山 正彦
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2010 年 136 巻 5 号 p. 294-297

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抄録

がんの制圧は世界の悲願であり,がんの本態の理解は,新規医療の創生に結び付く.ゲノム医科学の進展は,医療開発研究に新たな可能性を与えるとともに,画期的な新治療への期待をさらに大きなものとした.実際,がんの病態解明研究は急速に進化し,さまざまな分子標的薬を登場させ,個別化医療の新概念を実践の場に根付かせた.しかしながら,現在までのところ,画期的な治療,新薬の開発は稀少例にとどまっており,その成果は総じて期待はずれ,ないしは頭打ちである.「膨大な科学的発見,巨大な資本の投入,されど極めて低率な社会還元」,ためにがんトランスレーショナルリサーチの重要性が広く認識され,その効率化と促進へ向けてさまざまな対策・工夫が試みられている.しかしながら,いまなお多くの課題が山積している.本邦におけるがんトランスレーショナルリサーチの現状,直面する課題,そして今後について概説した.

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