日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
原著
肺移植における血液製剤準備量と使用量
浅野 尚美池田 亮小郷 博昭藤井 敬子杉山 暖子池田 和真小出 典男
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 56 巻 5 号 p. 606-611

詳細
抄録

岡山大学病院では,1998年に本邦初の生体肺移植が行われて以降2009年3月までに52例の生体肺移植と15例の脳死肺移植の計67例の肺移植が行われた.特に脳死肺移植では,限られた時間内に血液製剤を準備する必要があり,これまでの肺移植における血液製剤使用量から術前準備量について検討を行った.
赤血球製剤の平均準備量は57.4U,平均使用量は33.5U,C/T比(交差試験単位数/輸血血液単位数)1.73であった.FFPの平均準備量は43.3U,平均使用量は19.4Uで,PCの平均準備量は27.7U,平均使用量は19.8Uであった.両肺移植の平均血液使用量が,赤血球製剤37.9U,FFP 21.8U,PC 22.8Uであったのに対し,片肺移植の平均血液使用量は,赤血球製剤11.5U,FFP 7.0U,PC 4.5Uで有意差が認められた.また,赤血球製剤を100U以上準備した症例が5例あり,全て両肺移植で,うち3例が脳死移植であった.
肺移植では,症例毎の癒着の程度の相違等で一律の血液準備量の決定は難しいと考えられるが,今回の肺移植における血液製剤使用量の検討から血液の必要量については,両肺移植か片肺移植であるか,恐らく,人工心肺の使用の有無が大きな因子であることが示唆された.また,緊急の脳死肺移植や大量の血液製剤準備に対応できるよう,日常的に異型適合血の選択を含めた緊急時の対応と診療科等との連携を深めることが必要であると考えられた.

著者関連情報
© 2010 日本輸血・細胞治療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top