日本透析療法学会雑誌
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処方透析の実際と食事管理
樋口 順三小沢 喜久夫酒井 清孝
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1985 年 18 巻 4 号 p. 355-363

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抄録

透析治療の進歩はめざましいものがあり, アセテート透析から重曹透析の転換によって透析の副作用は著しく改善された. 重曹透析では従来よりも除水量は有意に増加するが, 除水量とNa除去量とは極めて有意に相関し, 除水量の増加に伴って過剰なNa除去による透析愁訴が再び出現するようになった. これを改善し無症状透析を行うには食塩摂取量にみあったNa除去を行うことが重要で, プールモデルを応用して, 目的とするNa除去を行い, さらに細胞内からも除水するような透析液Na濃度を設定することが重要である. この数年重曹透析にさらにNaインフユーザーを用いることにより, 透析液Na濃度をそれぞれの患者の条件に適合するように変化させた処方透析が可能となり, 高性能で大面積のダイアライザーを使用して, 従来よりもはるかに高い効率の透析が無症状で行えるようになった. 500透析での重回帰分析から適正な透析液Na濃度の決定には除水量の因子が極めて大きいことがわかり, 除水量を因子とする簡易式を提示した.
こうした処方重曹透析では従来の低い透析効率での食事管理とは異なる考え方が必要であり, 処方透析を行いやすいように日常生活での水と食塩との摂取を指導すべきで, 平均除水量1lあたり食塩6g以下になるように, 水と食塩との摂り方のバランスを考慮して1日の食塩摂取量を指導することが望ましい.
蛋白摂取についてはurea kineticsによる尿素産生量を臨床検査データから計算し, Gotchの式でのPCRで蛋白摂取量を推測するとともにに, 透析前後のBUNなどから透析での尿素除去量を計算して, 尿素の産生と除去とのバランスがとれるような蛋白摂取量とダイアライザー性能の検討が必要である.

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