日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
臨床
顎裂部骨移植術と同時に隣接する側切歯に対し歯胚回転を行った1例
飯田 明彦高木 律男小野 和宏八巻 正樹齋藤 功稲見 佳大
著者情報
ジャーナル 認証あり

2010 年 35 巻 3 号 p. 241-246

詳細
抄録

顎裂部骨移植術と同時に隣接する側切歯の歯胚回転を行い,萌出誘導を行った両側性唇顎口蓋裂の1例を報告した。患児は手術時7歳4か月の男児。顎裂は右側のみに存在していた。画像所見では顎裂に隣接する上顎右側側切歯は矮小歯で,歯軸が約90°傾斜し低位を示した。歯根の完成度はMoorreesの分類のRiからR1/4であった。同側の第二小臼歯も欠如していた。
手術時,移植床を形成したところ側切歯歯胚がminor segmentの破裂縁に露出した。上顎右側乳犬歯を抜歯し,側切歯歯冠部の歯小嚢を除去後,側切歯根尖部を回転軸にして乳犬歯の抜歯窩に倒すように回転させた。その後,腸骨海綿骨細片5ccを充填し完全閉創した。
側切歯は術後8か月時に萌出し,術後2年で歯根形成が完了した。現在,術後7年経過したが歯根吸収,歯根湾曲および歯髄腔の狭窄などは認められず経過良好である。
歯胚回転を成功させるためには,歯根形成の開始期に低侵襲で,かつ根尖の位置を変化させないように手術を行うことが重要で,回転角度は90°以内が望ましいとされている。これらの条件を満たせば,歯胚回転は萌出方向,位置などの異常が高率に生じる顎裂部の咬合構築の一つの治療手段になりうると考えられた。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top