心臓
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症例
拡張型心筋症様のエコー所見を呈した乳児期早期発症BWG症候群の3例
荒木 徹小寺 亜矢大月 審一佐野 俊二笠原 真悟高橋 伸方加藤 哲司細木 瑞穂和田 智顕高杉 瑞恵坂本 朋子池田 政憲
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2010 年 42 巻 11 号 p. 1450-1457

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抄録

乳児期早期に発症したBWG症候群(Bland-White-Garland症候群)の3例を経験した. 3例ともに, 多呼吸などの心不全症状で発症し, 心エコー検査が診断の契機となった.
心エコー検査では, 3例ともに左室収縮力低下, 左室拡大, 僧帽弁逆流という拡張型心筋症様の所見を呈し, 症例1, 2は, 主肺動脈から左冠動脈が起始する所見を直接確認できた. 一方, 症例3は左冠動脈の肺動脈起始を確認できなかったが, 右冠動脈の拡大, 右室自由壁や心室中隔内の異常信号, 左冠動脈内の逆行性血流, 肺動脈内に流入する異常血流を認めた. それらから右冠動脈から左冠動脈への側副血行を介したシャントの存在を考え, 冠動脈造影により確定診断した. また, 症例2, 3では, 左室前外側乳頭筋の輝度上昇がより強く認められ, 後内側乳頭筋との輝度差はBWG症候群を疑う契機となる所見と考えられた. 3症例ともに左冠動脈移植術を行い, 術後早期に心機能は正常化し, 僧帽弁逆流も軽減, 心不全症状は消失した.
心エコー検査にて, 左室収縮力低下, 左室拡大, 僧帽弁逆流など, 拡張型心筋症様の所見を呈した症例では, BWG症候群の可能性も念頭に置き, 冠動脈形態や冠動脈・心筋内の血流を検討する必要があり, 疑いがあれば冠動脈造影などで精査し, 鑑別をすることが重要である. 特に乳児期早期はBWG症候群が症候化しやすい時期であり, より注意が必要と思われた.

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© 2010 公益財団法人 日本心臓財団
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