日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
放射線診断・核医学
石原 圭一汲田 伸一郎
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キーワード: 頭頸部癌, PET/CT, FDG
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2010 年 113 巻 5 号 p. 429-434

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抄録

形態と代謝画像が同時に提供できる新しい画像診断法であるPET/CT検査が本邦でも普及しつつあり, 多くの臓器が近接し, 高頻度に生理的なFDG集積がみられる頭頸部領域においては, FDG-PET/CTが標準的な画像診断法となってきている. 病期診断において, FDG-PET検査は原発巣の周囲臓器への浸潤を正確に評価可能で, リンパ節転移でもCTやMRIなどの断層法と比べ優れた検出能が実証されている. しかしながら, 触診などでN0とされた症例では感度は十分ではなく, このような症例ではセンチネルリンパ節シンチグラフィの適応となる. 頭頸部癌では遠隔転移はまれであるが, 重複癌が比較的多くみられる. 遠隔転移と重複癌の多くは糖代謝が亢進しており, FDG-PETで容易に描出される. 治療効果判定において, FDG-PET検査は病変の活性の有無を正確に評価でき, 迅速な治療の追加により局所の制御率を高め, 生存率や生活の質の改善が期待できる. また, 病変のFDG集積から完全寛解が得られる反応例と完全寛解に至らない不応例が鑑別できる可能性も示唆されている. FDG-PET検査は, 治療法の選択にかかわらず, 頭頸部癌の局所再発診断に高い感度を示すことが知られている. 陰性適中率も高く, FDG-PET検査が陰性であれば追加検査の必要はない. 逆に陽性適中率や特異度は低く, PET検査が陽性であれば生検が必須となる. 頭頸部癌におけるFDG集積から悪性度を評価でき, 糖代謝の亢進が予後と相関することが実証されおり, 再発症例において糖代謝の亢進は全生存率の独立した予後因子とされている. 原発不明癌ではFDG-PETを追加しても新たな情報が得られないことが多く, FDG-PETの有用性は確立していない. 放射線治療計画では, FDG-PET/CTにより放射線治療計画への応用も容易となり, 新たな情報が加わることで約3割の治療計画に変更が生じる.

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© 2010 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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