日本畜産学会報
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肉用牛の成長と生産に関するシステム分析
II.モデルの妥当性検討
広岡 博之山田 行雄
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1987 年 58 巻 2 号 p. 138-146

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抄録

飼料の量と質ならびに遺伝的サイズを入力して肉用牛の成長, 体構成成分, 枝肉組成についての経時的変化を予測するために作成されたシステムシミュレーションモデル (広岡・山田1985) が下記のごとく評価された.(1) 黒毛和種去勢牛を材料として行なわれた飼養条件の異なる15種の肥育試験から経時的に得られた飼料摂取量と成長の実測値をモデルから得られたシミュレート値と比較した. 体重の推移はシミュレート値が若干過少に評価されたものの実測値とほぼ一致した. また, 平均1日増体量のシミュレート値は実測値より約5%過少に評価された.(2) モデルの一般性を明らかにするために, 黒毛和種およびホルスタイン去勢牛について日本飼養標準で期待される1日増体量を, その増体量に見合うエネルギー量および3水準の代謝率をモデルに入力して得られた増体量のシミュレート値と比較した. その結果, 飼養標準における期待1日増体量は高水準および低水準の代謝率のもとで得られたシミュレート値の範囲内にあった.(3) 枝肉組成に関するモデルの妥当性を35頭の黒毛和種去勢牛ならびに22頭のホルスタイン去勢牛の解体成績を用いて検討した. 黒毛和種においては, 筋肉と脂肪のシミュレート値は実測値とほぼ一致したが, 骨量についてのシミュレート値は過大に評価された. この骨量の過大評価の原因は, 灰分量推定に当ってモデルに遺伝的サイズを考慮しなかったためと考えられた. そこで, 黒毛和種を小型品種と仮定し, 文献値に従って灰分量のシミュレート値を10%減じたところ, 骨量のみならず全組織重量のシミュレート値は実測値とよく一致した. 中型品種のホルスタインにおいては全組織重量についてのシミュレート値は実測値と一致し, 補正の必要はなかった. 以上の結果より, さまざまな品種及び飼養条件において本モデルは適当で, 適用可能であることが結論づけられた.

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