日本畜産学会報
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イタリアンライグラスの繊維消化に及ぼす貯蔵方法の影響
西野 直樹脇田 幸奈内田 仙二
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1994 年 65 巻 8 号 p. 709-715

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抄録

乾草またはサイレージという貯蔵方法の違いが,牧草の繊維消化に及ぼす影響について検討した.出穗期のイタリアンライグラスから,天日乾草および予乾サイレージを調製し,大豆粕と9:1の割合の混合飼料を山羊4頭に給与して,消化率,窒素出納,乾物とNDFのルーメン内分解率,飼料付着性のカルボキシメチルセルラーゼ(CMCase)活性,および液相(Co-EDTA)と固相(Cr-CWC)の消化管内通過速度を測定した.
予乾サイレージ(乾物含量30.8%)のpHは4.75で,酪酸が優占した.乾草はサイレージに比べてNDF, NDIN,(中性デタージェント不溶性窒素)およびADIN(酸性デタージェント不溶性窒素)含量が高く,乾草調製中に牧草蛋白質の一部が繊維成分と結合したことが示唆された.すべての成分消化率はサイレージ給与区の方が高い値を示したが,繊維成分の消化率には有意差が認められなかった.窒素蓄積量は,サイレージを給与した山羊が有意に高い値を示した.
サイレージは乾草に比べ,NDFのルーメン内可溶性区分の割合が高く(5:5および0.0%),分解性区分の割合(71.4および74.4%)およびその分解速度(3.2および4.2%h-1)が低かった.また飼料付着性のCMCase活性もサイレージの方が低い値を示した.消化管内通過速度は,液相および固相のいずれにおいても,給与区間に有意な差は認められなかった.これらの結果は,乾草およびサイレージという貯蔵方法の違いは,可溶性炭水化物含量だけでなく繊維成分の消化性にも少なからぬ影響を与えることを示している.

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