1996 年 67 巻 12 号 p. 1058-1067
ホルスタイン種雄子牛計24頭を用いて2回の窒素(N)出納試験を実施した.各試験では3頭を1区とし,2週間を王期とする2×2ラテン方格法による実験を2回反復実施した.子牛は6週齢で離乳し,8週齢から開始した4週間の試験期間中も食道溝反射を維持させた.試験期間中の基礎飼料はトウモロコシ,大豆粕および稲ワラから成り,乾物当たりのCP含量は14.5%であった.試験1ではL-リジン塩酸塩とDL-メチオニン,試験2ではL-リジン塩酸塩のみを食道溝経由で投与した場合のN出納および血漿遊離アミノ酸濃度を,それぞれ等N量のL-グルタミンを同様にして投与した場合と比較した.その結果,N出納はL-リジン塩酸塩とDL-メチオニンの同時投与により改善されたが,L-リジン塩酸塩単独では改善されなかった.L-リジン塩酸塩とDL-メチオニンの同時投与は血漿中の遊離リジンとメチオニンの濃度を増加させる一方,側鎖アミノ酸濃度を減少させた.しかし,L-リジン塩酸塩の単独投与は血漿リジン濃度を増加させたが,側鎖アミノ酸濃度には影響しなかった.