日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
症例報告
Neisseria subflava腹膜炎を発症した1型糖尿病の腹膜透析患者の1例
小寺 永章三瀬 直文内田 梨沙石本 遊田中 基嗣田中 真司栗田 宜明杉本 徳一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 44 巻 4 号 p. 319-322

詳細
抄録

34歳,男性.1型糖尿病による腎不全のため,2008年4月腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)導入し,マニュアル接続によるダブルバッグシステムにて夜間間欠的腹膜透析(nocturnal intermittent peritoneal dialysis:NIPD)を施行していた.2009年1月22日腹痛・下痢・嘔吐・PD排液混濁を認め受診.来院時体温37.4℃,腹膜刺激症状あり,WBC 12,800/μL,CRP 1.1mg/dL,PD排液WBC 2,500/μLと上昇しており,腹膜炎と診断した.セファゾリン(CEZ),セフタジジム(CAZ)の腹腔内あるいは静脈内投与8日間に加え,セフォチアム(CTM)経口投与を6日間施行したところ,腹膜炎は治癒し,現在まで再発は認められていない.PD液からはNeisseria subflavaが検出され,起因菌と考えられた.分離菌はCEZ,CAZ,CTMに感受性であった. Neisseria subflavaは口腔内常在菌で,まれに心内膜炎,髄膜炎などの起因菌となる.PD患者のNeisseria腹膜炎も少数ながら報告されており,腎不全以外に合併症のない症例でも発症している.本症例は糖尿病患者の感染脆弱性,およびバッグ交換時のマスク非着用がリスクと考えられ,感染経路は飛沫による経カテーテルと推察された.マスク着用による,バッグ交換時の飛沫感染予防の重要性が再確認された.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top