カウンセリング研究
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民間ひきこもり援助機関の利用による社会的ひきこもり状態からの回復プロセス
草野 智洋
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2010 年 43 巻 3 号 p. 226-235

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抄録

本研究の目的は,社会的ひきこもり状態にある人が民間ひきこもり援助機関での活動を通して就学・就労に至るまでの回復プロセスを理論化し,そのプロセスを促進させるために有効な援助の方策を探ることである。8名の社会的ひきこもり経験者(うち6名が民間ひきこもり援助機関利用者)へのインタビューデータを,質的データの分析法のひとつである修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した結果,社会的ひきこもり状態から回復し就学や就労に至るための心理的な要因として,[(規範・常識・他者からの評価などへの)とらわれからの解放]が重要であることが見いだされた。さらに,[とらわれからの解放]は,ひきこもり援助機関などの〈社会との中間地点〉における〈人との出会い〉と〈非言語体験〉によってもたらされることが示された。このことから,援助者の果たすべき役割は,規範や常識や他者からの評価などに過度にとらわれなくても,生き生きとした人生を送ることができるということを,ひきこもり当事者に身をもって示し,彼らがこれまで出会ってきた大人とは異なる新しい適応のモデルとなることである,ということが示唆された。

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© 2010 日本カウンセリング学会
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