日本歯周病学会会誌
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露出セメント質に関する形態学的研究
種々な根管状況の歯周疾患歯における統計学的分析
高田 耕平西村 和晃寺野 弘徳山岡 昭
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1993 年 35 巻 1 号 p. 243-252

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抄録

著者らは先に, 歯周疾患歯セメント質の形態的変化を統計学的に分析し, その深層部には何ら形態的変化がみられないことを示した。しかし, この報告で用いた被験歯のほとんどは有髄歯であり, 無髄歯セメント質の検索は行っていない。そこで今回は, 種々な根管状況の歯周疾患歯における露出セメント質の形態的変化を統計学的に分析するため, 以下の実験を行った。73本のヒト歯周疾患歯を被験歯とし, ポケットの深さが5mm未満の群と, 5mm以上の群とに分けた。さらに両群被験歯を, 1. 有髄歯, 2. 既根充歯, 3. 変色既根充歯, 4. 未処置の感染根管歯, 5. 変色した未処置の感染根管歯と, 5種類にそれぞれ分類した。被験歯は抜去後, 歯根を長軸方向に2分割し, セメント質割断面をSEMで観察, その形態的変化を数量化して統計処理を行った。その結果, ポケット5mm未満, 5mm以上の両群とも, 有髄歯ならびに既根充歯セメント質深層部には変化がみられなかったのに対して, 変色既根充歯, 未処置の感染根管歯および変色した未処置の感染根管歯では, 深層セメント質に基質線維の膨化, 板状化などの変化が認められた。これらの結果から, 有髄歯ならびに変色していない根充歯のポケット対応セメント質深層部の健全性が示唆された。

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