2011 年 52 巻 10 号 p. 662-670
症例1:56歳男性,アルコール性肝硬変,難治性胸腹水.肝動脈造影で肝内全域に肝動脈門脈短絡(APシャント)による遠肝性門脈血流が描出された.難治性胸腹水に対して経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(transjugular intrahepatic portosystemic shunt:TIPS)を施行し胸腹水は消失した.症例2:70歳男性,アルコール性肝硬変,難治性腹水.肝動脈造影で肝内全域にAPシャントを認め,門脈血流は遠肝性に描出された.難治性腹水に対してTIPSを施行したところ,腹水は残存するものの減少した.2例とも術後大きな合併症は認めなかった.肝内びまん性APシャントによる難治性腹水に対しTIPSは有効な治療法と思われた.