地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
1996年12月6日姫川支流蒲原沢土石流災害(速報)
渡部 直喜丸井 英明佐藤 修
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 103 巻 1 号 p. III-IV

詳細
抄録

1996年12月6日午前10時40分頃, 姫川支流の蒲原沢(第1図)で土石流が発生した. 土石流は下流の災害復旧工事現場を直撃し, 作業員14名が死亡あるいは行方不明となる惨事となった. 蒲原沢は急峻な地形(第2図)の荒廃した渓流である. 上空からの観察によって, 2か所(標高1350m付近と600m付近) の新規崩壊場所が確認された (写真2-4). 源頭部の崩壊は標高1350m付近にあり, 来馬層群と第四紀風吹火山噴出物との地層境界部(第3図)にあたる. この付近は地形的勾配変曲点であり, 侵食営力が集中しやすい. 標高600m付近の崩壊は, 渓岸斜面下部が侵食されることによって生じたとみられる. 今回の土石流は, 蒲原沢上流の標高1350m付近の源頭部で新たな斜面崩壊が発生し, 崩落した土砂が急勾配の沢を流下する過程で, 不安定な渓床堆積物の取り込みや渓岸侵食によって, 発達していったものと推定される. 蒲原沢では1995年7月11日の集中豪雨による姫川土砂災害の際にも国界橋より下流に新設した「新国界橋」を押し流す大規模な土石流が発生している.

著者関連情報
© 日本地質学会
前の記事
feedback
Top