大気環境学会誌
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原著
北米産針葉樹から放出されるVOCsの化学分析とOH反応性測定
山崎 昌平Emile Amedro Damien JeanJones Charlotte中嶋 吉弘加藤 俊吾梶井 克純
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2012 年 47 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

北米大陸原産のカナダトウヒ(picea glauca)から放出される生物起源揮発性有機化合物(BVOCs)のPTR-MSによる濃度測定並びにレーザー・ポンプ・プローブLIF法によるOH反応性測定を行った。温度を操作することでBVOCsの濃度並びにOH反応性が増減する事が観測された。その結果、アセトン、イソプレン及びモノテルペンを高い濃度で観測した。また、レーザー・ポンプ・プローブ法により得られたOH反応性とBVOCsの濃度測定から得られた各VOCの濃度並びにOHとの反応速度定数の積の和により定義されたOH反応性の整合性を調査した。その結果、温度が上昇するにつれて二つのOH反応性の差が大きくなったことが分かった。二つのOH反応性の差が当研究室の成分測定で把握出来ていないVOCsによるOH反応性への寄与に相当する。その値の変化の挙動を、観測した既知のVOCsであるβ-ピネンなどの環式モノテルペン、β-ミルセン(環構造を持たないモノテルペン)やイソプレンとOH反応性への寄与において比較検討を行った。その結果、環式モノテルペンと正の相関を示した事が分かった。したがって、カナダトウヒから放出されるVOCsの内、未計測のVOCsについてはOHとの反応性の寄与においてその大部分を占めるVOCsが環式モノテルペンと同様の放出挙動を示すVOCsであると考えられる。

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© 2012 社団法人 大気環境学会
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