日本緑化工学会誌
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塩類がLolium multiflorum, L. perenne およびFestuca arundinacea の成長およびイオン含有率におよぼす影響
アブドゥルザデイ アーマツド嶋 一徹千葉 喬三
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1997 年 23 巻 3 号 p. 161-169

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抄録

法面緑化牧草3種類 (Lolium multiflorum, Lolium perenne, Festuca arundinacea) についてナトリウム濃度0, 50, 100, および150mMの条件で溶液栽培して, 生長速度, ナトリウム蓄積ならびに窒素代謝から耐塩性を比較した。その結果, LoliumよりFestuca耐塩性が高いことが明らかになった。Loliumに比べてF.arundinaceaでは, 栽培溶液のNaCl濃度の増加にともなう光合成速度の低下と乾重の減少がみられた。塩分濃度の増加にともない植物体内のナトリウムイオンと塩素イオンの増加が認められた。2種類のLoliumでは, 地上部へのナトリウムイオンと塩素イオンの蓄積がみられたが, F. arundinaceaでは地上部へのナトリウムイオン蓄積がほとんどみられなかった。栽培溶液の塩類濃度の増加にともなって植物体内のカリウムイオン濃度に対するナトリウムイオン濃度の比率 (K+/Na+) が減少しており, とくにその減少は2種類のF.arundinaceaに比べLoliumで顕著であった。2種類のLoliumの全窒素と硝酸態窒素濃度は栽培溶液の塩類濃度にともない急激に減少していたが, F. arundinaceaではこのような影響が150mM処理のみで認められた。アンモニア態窒素濃度は, いずれの種でも培養液の塩類濃度にともない増加した。これらの結果からFestucaではおそらく塩類の排除機能によるストレス回避の能力を持っているものと推測された。Lolium2種ではこのような機能が存在しないと考えられた。以上の結果から, 塩類土壌における牧草類を用いた緑化にFestucaの適応が可能であることが示唆された。

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