日本緑化工学会誌
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社寺林植生の多様性に関する検討
岡山市における社寺林を事例として
坂本 圭児石原 晋二千葉 喬三
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1989 年 15 巻 3 号 p. 39-47

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抄録

岡山市の市街地とその近郊の社寺林を対象に, 孤立林としての社寺林の特性を明らかにすることを目的とし, 社寺林の種多様性と境内面積, 土地所有形態, 周辺地域の土地利用, 1945年の戦災との対応を出現種数と多様度としてShannon関数とから検討した。その結果, 種数とShannon関数には境内面積の影響が大きいことが改めて確認された。土地所有形態として神社と寺院による相違を検討したが, 寺院において神社よりも種数が多く, Shannon関数が大きい傾向がみられた。周辺地域の土地利用としては, 社寺境内を中心とした半径2.5kmの円内の地域それぞれ土地利用を地形図から決実し, 密集地, 低建ペい率地, 及び, 田畑の3つのタイプの相違を検討した。周辺地域が田畑では面積が大きい場合や寺院において種数が多くShannon関数も大きく, 密集地, 低建ペい率地において種数とShannon関数が低下し, 低建ペい率において種数が減少する傾向がみられた。しかし, 種数とShannon関数に関して境内面積の影響が非常に大きく, また, 個々の社寺林のばらつきが大きいため, 土地所有形態と周辺地域の土地利用によるこれらの相違は顕著ではなかった。種組成からみると, 神社では, クスノキ(CinnamomumCamphora)やイチョウ(Ginkgobiloba)などの少数の樹種の優占度が高く, 寺院では, クスノキの優占度が下がり, その他の樹種の優占度が全体的に高くなっていた。戦災は社寺林の構造に対する影響の大きな撹乱であると考えられるが, 現時点では, 多様性に与える影響は非常に小さかった。

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