抄録
症例は69歳,女性.10代のときに腎結核で右腎摘出の既往があった.2011年,1月初旬から微熱・食欲不振があり,呼吸苦が出現したため当院へ紹介入院となった.心エコーと単純CTで上行大動脈の拡大と心嚢液貯留を認め,心タンポナーデと診断し心嚢穿刺を行った.心嚢液の塗抹培養およびpolymerase chain reaction(PCR)で結核菌は検出されなかったが,adnosine deaminase(ADA)活性が高値であったため結核性心膜炎として4剤併用抗結核療法を開始した.しかし加療中の第32病日,夜間突然の背部痛が出現した.急性A型大動脈解離と診断し,緊急手術にて大動脈基部および上行置換術を施行した.病理検査の結果,上行大動脈外膜にLanghans型巨細胞を伴う肉芽腫性炎症所見が認められた.術後経過は良好で4剤併用療法を2カ月間施行し,現在リファンピシン,イソニアジドの2剤併用療法を継続中である.術後70日以上経過中で,グラフト感染などは合併していないが注意深いフォローが必要である.