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Print ISSN : 1881-0241
家族性卵巣癌
関根 正幸田中 憲一
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1999 年 5 巻 1 号 p. 59-62

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抄録

家族性腫瘍とは家系内に癌の異常集積性を示す腫瘍性疾患である.癌の家族集積の要因には遺伝・環境・偶発の三者が混在している.家族性腫瘍は高頻度にみられるものではないが, ほとんどすべての種類の臓器癌において一部に家系内集積性を示す群が存在する.家族性腫瘍のなかで特に遺伝的背景が強い場合, 遺伝性腫瘍症候群または高発癌性遺伝病とよばれる (表1).遺伝性腫瘍の多くは, 癌の易罹患性に関連する単一の遺伝子が生殖細胞系例で突然変異を起こしていて, メンデルの法則に従って次の世代に遺伝していくために, 発癌に対する高感受性も受け継がれていく単一遺伝子性疾患である.その特徴として, 非遺伝性の散発性腫瘍に比べて若年発症例が多く, 同一個体内で複数の臓器に癌が多発することが知られている.
現在までに多くの家族性腫瘍の原因遺伝子が単離され, 一部では遺伝子診断が可能となっている.それらの原因遺伝子は, 家族性腫瘍のみでなく散発性腫瘍の発癌にも関与していることが多く, 家族性腫瘍についての研究は発癌機構の解明に非常に大きな役割を担っている.本稿では, 家族性卵巣癌に関する最近の知見と今後の展望について述べてみたい.

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