肺癌
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原著
肺腺癌の進展におけるアクアポリンの役割
町田 雄一郎上田 善道上野 正克田中 良相川 広一薄田 勝男佐川 元保佐久間 勉
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キーワード: 肺腺癌, アクアポリン
ジャーナル オープンアクセス

2012 年 52 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

目的.細胞膜水輸送チャネルとして発見されたアクアポリンaquaporin(AQP)にがんの発生や進展に関わる新規機能の存在が近年提唱された.本稿では多様な肺腺癌亜型におけるAQPの発現と進展への関与に関する知見を紹介する.結果.肺癌ではAQP1,3,4,5が腺癌細胞に発現する.その発現は,1)細胞分化に相当する極性を有するAQP1,3の発現,2)極性は保たれるが正常肺では認められないAQP5の異所性発現,3)極性を喪失したAQP1,5の過剰発現に区分される.1)は細気管支肺胞上皮癌に高頻度で,進展に伴い減少する.2)は肺胞上皮癌のみならず異型腺腫様過形成でも見られ,腫瘍発生に関係していると考えられる.3)は微小浸潤部から観察され始め,進展とともに頻度を増し,生命予後と有意な関連を示す.AQP1は浸潤先進部での発現亢進と浸潤部lamellipodia細胞膜での発現を介した,AQP5は細胞増殖や上皮間質移行関連分子の活性化を介した肺腺癌の浸潤・転移能亢進への関与が示唆されている.AQP5の発現と粘液産生性肺癌の進展,AQP1の過剰発現と微小乳頭状成分の侵襲性との関連性も認められる.また,AQP4は肺腺癌で発現レベルが高く,生命予後良好因子となる.結論.AQP1,5は肺腺癌の進展に関わる重要分子の一つと考えられ,新たな進展阻止法の確立のための標的分子となる可能性が示唆される.

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© 2012 日本肺癌学会
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