日本乳癌検診学会誌
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原著
県内乳がん検診の実態と余力に関する調査
―受診率50%達成に向けて―
小林 茂樹田中 幸夫松尾 みち子熊下 利香中井 昌弘川口 達也近藤 偲瑞子永澤 直樹山田 隆憲荻野 豊大西 修古元 重和竹田 寛
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2012 年 21 巻 1 号 p. 65-71

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抄録

NPO 法人三重乳がん検診ネットワークは2010年4月より三重県から委託を受け,乳がん検診等受診率向上事業を開始した。乳がん検診受診率50%を達成するための調査として,県内乳がん検診の実態調査を行った。2009年度乳がん検診を対象として,委託側(市町)と受託側(検診実施機関)の両者に調査を行った。委託側調査は,住民検診者数で,視触診およびマンモグラフィ(MMG)とMMG 単独の件数を県内全市町(29)から回答を得た。受託側調査は県内の乳房X 線撮影装置を保有している全52機関(検診実施48機関)に行い,2009年度のMMG 撮影状況,次年度以降に実施可能な余力および必要な人員に関するアンケート調査を行った。県内在住者に対するMMG 撮影総件数は93,525件で,2009年度40~74歳女性人口を分母として,推定連続受診者数を差し引いた受診率は27.5%であり,一方で逐年受診者が30%以上を占めていることが判明した。次年度以降に増加可能な乳がん検診件数は126,950件で,2009年度の乳がん検診実施件数と合わせると,2011年度以降に達成可能な乳がん検診受診率は75.2%であることが判明した。この受診率を達成するためには,視触診医師,撮影技師ともに2割強の人員増強が必要であることも判明し,人材支援の検討が必要である。受診率50%以上を達成するためには,新規受診者への啓発とともに,隔年受診の周知徹底が重要な課題である。

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© 2012 日本乳癌検診学会
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