日本腹部救急医学会雑誌
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原著
膵切除後動脈性出血に対するInterventional Radiologyの意義
川野 陽一相本 隆幸谷合 信彦真々田 裕宏吉田 寛中村 慶春廣井 信峯田 章吉岡 正人上田 純志村田 智汲田 伸一郎内田 英二
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キーワード: 膵切除, 術後出血, 緊急止血
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2012 年 32 巻 3 号 p. 575-581

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抄録

〈はじめに〉膵切除後動脈性出血は,致死的となる重篤な合併症であるが,近年,Interventional Radiology治療の進歩がめざましく,術後動脈性出血の治療戦略にも大きな変化をもたらしている。本稿において,当科における膵切除術後動脈性出血に対するIVR治療の意義を検討したので報告する。〈対象と方法〉膵切除を要した,2005年1月~2009年12月までの後期(133例)とそれ以前の前期(197例)で,術後出血を認めた症例(前期:13例(6.6%),後期:4例(3.0%))を対象とし,両群間で比較検討を行った。〈結果〉前期では5例にIVRを行い,止血成功は3例であった。止血不能の2例は,直後の緊急手術にて全例止血された。初回からIVRを行わず開腹止血術を施行した他の7例では,止血成功例は4例のみで,止血不能となった3例は全例死亡した。その他の1例では,出血後にそのまま心停止となったため,IVRや開腹止血術にも進めなかった。後期では4例で術後出血を認め,有意差は認めなかったものの,術後出血の頻度は減少した。全例にIVRを行い,止血は全例で可能で,死亡例を認めなかった。〈結論〉膵切除後の動脈性出血は,手術手技や術後管理の発展などにより頻度が低下したが,発生時はIVR治療を第一選択に考慮すべきである。すなわち,迅速な診断,速やかな外科医とIVR治療医との連携による処置が重要となる。

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© 2012 日本腹部救急医学会
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