日本大腸肛門病学会雑誌
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症例報告
全大腸壊死をきたした劇症型アメーバ性大腸炎の治療経験
太田 竜関川 浩司北村 雅也高橋 保正小根山 正貴中山 幹大
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2012 年 65 巻 7 号 p. 393-398

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抄録

アメーバ性大腸炎の多くは慢性に経過するものの,稀に腸管穿孔,腹膜炎などを生じて重篤化する劇症型が存在し予後不良とされている.今回全大腸壊死をきたした極めて重篤な劇症型アメーバ性大腸炎を経験したので報告する.症例は66歳,女性.下痢を主訴に近医受診.抗生剤投与にて軽快せず紹介となった.腹部は膨満し全体に圧痛を認め,血液検査にて炎症反応高値であった.腹部CTにてびまん性に大腸壁肥厚と膿瘍形成を認めた.CFにて大腸粘膜の壊死を認め,壊死性腸炎の診断にて緊急手術を行った.大腸の腸管壁は脆弱となり菲薄化し,大腸全摘,回腸瘻造設術を施行した.切除標本では大腸はいわゆるぼろ雑巾様所見を呈していた.病理組織診にて栄養型アメーバ虫体が認められ劇症型アメーバ性大腸炎と診断された.診断に難渋する腸炎では本症を念頭に置き精査をすすめるとともに,適切な術式を選択することが肝要と考えられた.

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© 2012 日本大腸肛門病学会

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