応用統計学
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研究論文
Multiple Imputation法による2段階ケースコントロール研究の解析
野間 久史田中 司朗
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 41 巻 2 号 p. 79-95

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抄録

2段階ケースコントロール研究は,疫学研究方法論において,共変量測定のコスト・労力を節減するための有用な研究デザインである.多くの応用では,重要な共変量の情報が1段階目の対象者全員に測定され,その中には2段階目で測定される共変量と相関の強い代替変数の情報が得られることもある.これらの情報を,いかに曝露効果の指標の推定に役立てるかが,重要な統計的問題となる.本稿では,この利用可能なすべての情報を有効に活用する方法として,Multiple Imputation法による解析方法を与える.Multiple Imputation法は,不完全データの解析方法として,医学研究の実践でも広く普及しており,ソフトウェアも充実しているため,疫学研究の実務家にも扱いやすいという利点がある.また,Multiple Imputationによる推定量は,本質的に最尤推定量と同等の漸近有効性を有し,従来のセミパラメトリック有効な推定量に比べ,同等以上の漸近的な精度を持つ.数値実験による評価では,Multiple Imputationによる方法が,実践的な設定のもとで,既存の方法よりも高い推定精度を持つことが示された.事例として,Wilms腫瘍の臨床試験データをもとにした,2段階ケースコントロール研究の解析結果を示す.

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© 2012 応用統計学会
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