抄録
背景:本邦において腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(以下,LADG)は徐々に普及しているが,その技術的難易度やエビデンス蓄積の不完全さのため,地域病院まで浸透しているとは言えない.本研究の目的は,地域病院である当院で本格導入した腹腔鏡補助下幽門側切除術(Laparoscopy-assisted distal gastrectomy,以下LADG)の短期成績を過去の開腹幽門側胃切除術(Open distal gastrectomy,以下ODG)と比較することで,当院の早期胃癌治療におけるLADGの根治性および安全性の継続性を検討することである. 方法:2008年1月から2009年12月に行われたODG群と,2010年1月から2011年12月に行われたLADG群を対象とし,患者背景,手術項目,術後経過,病理項目を比較した. 結果:ODG群19例,LADG群25例.手術時間・麻酔時間・リンパ節郭清個数に差は認めなかった.出血量はLADG群が有意に少なかった.初回歩行,初回排ガス,初回排便,経口摂取改善日,術後在院期間はいずれもLADG群が早かった. 結語:短期成績において,LADG導入後も導入前のODGと比較して,根治性と安全性という点で当院における早期胃癌治療のクオリティを保つことができた.今後は症例数を重ね検証を継続するとともに,長期成績の検討が必要である.