地質学雑誌
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論説
新潟県佐渡島に分布する中部更新統沢根層上部の貝形虫化石群と日本海表層水の低塩分化
石田 桂吉田 和弘松岡 篤
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2012 年 118 巻 8 号 p. 476-492

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抄録

中期更新世の日本海における環境変遷を明らかにするため,新潟県佐渡島に分布する沢根層上部の貝形虫化石を氷期−間氷期スケールで検討し,中期更新世に日本海表層〜浅海域が低塩分化した証拠を浅海層で初めて確認した.沢根層上部の堆積場は水深150〜200 m前後で変化し,低海水準期により浅く寒冷・低塩分な環境を示した.また,高海水準期でも暖流の影響が認められないことから,沢根層上部は亜間氷期から氷期に至る氷河性海水準変動を記録していると推察される.氷期の低塩分を示唆する貝形虫化石群集は,単位gあたりの個体数が少なく,後期鮮新世〜現在の地域的な低塩分環境を示唆する群集と異なること,低塩分環境に優占する2種は亜間氷期には全く産出せず,日本海の低塩分環境を生き延びた種の生息環境と類似する環境に現生していることから,沢根層上部には中期更新世以降に日本海で起こった氷期の表層水低塩分化が記録されていると考えられる.

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© 2012 日本地質学会
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