1997 年 3 巻 3 号 p. 201-207
食道静脈瘤患者6例に対して内視鏡的硬化・結紮術 (ESL) を行い, その施行前後の血行動態を血管造影にて検討した.治療前は, 静脈瘤への供血路として左胃動脈は全例, 左胃静脈は5例で関与していた.左胃静脈の血流方向は遠肝性4例, to-and-fro性2例であった.治療後, 静脈瘤が完全消失した5例では左胃静脈の血流方向が変化し, 2例が遠肝性から求肝性, 2例が遠肝性からto-and-fro性, 1例がto-and-fro性から左胃静脈描出不能へとそれぞれ変化した.また, 左胃静脈が描出された4例中3例に左胃静脈径の狭小化を認めた.一方, 遺残した症例は静脈瘤供血路が左胃動脈のみであり治療前後でto-and-fro性のまま変化を認めず, 血管径の変化もみられなかった.ESLは, 左胃静脈が静脈瘤に供血する症例に対しては左胃静脈の完全あるいは高度な血栓化により血行動態の変化が生じたと考えられた.