心電図
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心電学フロンティア2011(第46回理論心電図研究会)
Brugada症候群とJ波―早期再分極症候群との比較も含めて―
清水 渉河田 宏森田 宏伊藤 浩鎌倉 史郎
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2012 年 32 巻 3 号 p. 300-304

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抄録

2008年にHaïssaguerreらは,明らかな器質的心疾患を有さない特発性心室細動(IVF)患者206例中64例(31%)において,下壁(II, III, aVF)または前側壁(I, aVL, V4~V6)誘導心電図でJ波または早期再分極(early repolarization)パターンを認めることを報告し,早期再分極症候群(early repolarization syndrome : ERS)という概念を提唱した.一方で,右側胸部(V1~V3)誘導でJ点およびST上昇を認めるBrugada症候群も,同じく明らかな器質的心疾患を有さずVFを主徴とする疾患である.著者らの経験したVF既往のある49例のBrugada症候群患者において,15例(30.6%, P群)では常に,16例(32.6%, I群)では間歇的に下壁または前側壁誘導でJ波が記録されたが,残りの18例(36.7%, N群)では記録されなかった.経過観察中,VFの再発はP群,I群,N群の順に多く,Brugada症候群においてもJ波とVF発作の関連が示唆された.ERSとBrugada症候群は,J波症候群という概念で機序を同じとすると考えられているが,Na+チャネル遮断薬静注に対する反応は異なる.すなわち,Na+チャネル遮断薬によりBrugada症候群のST上昇は増強するが,Brugada症候群およびERSのJ波は減高することから,その機序は必ずしも同じではないと考えられる.

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© 2012 一般社団法人日本不整脈心電学会
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