症例は43歳,男性.幼少時より心電図異常を指摘されていた.某年6月某日,自宅安静時に突然意識を消失し,家族により心肺蘇生が施行され,救急隊により自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)で除細動され洞調律に復帰し,前医へ搬送された.第9病日に心室細動(ventricular fibrillation;VF)に対する植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator;ICD)植え込み目的で当院転院となり,心エコー,心臓CTにて,瘤内血栓を伴う左室心尖部瘤と心室中部閉塞性肥大型心筋症を認め,第12病日にICD植え込み術を施行した.心室内血栓はヘパリンとワルファリンにて消失し,経過良好にて退院となった.心尖部瘤を合併した肥大型心筋症では,文献的にも心室頻拍やVFといった致死的不整脈の出現する危険性が高く,心室中部閉塞性肥大型心筋症に心尖部瘤を伴う症例では突然死や致死性不整脈のリスクが有意に上昇することが知られている.したがって,本症例においてもハイリスクとして管理する必要があり,心尖部瘤を合併した心室中部閉塞性肥大型心筋症では突然死の予防としてICDを積極的に考慮する必要があると考えられた.