地理学評論 Ser. A
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習志野市における住民参加の制度とその領域性
上田 元
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1989 年 62 巻 6 号 p. 417-437

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抄録

習志野市における行政過程への住民参加の実態を検討する.行政は,市民本位の生活空間管理をめざしてコミュニティ単位に領域組織を編成し,これに参加する有志市民の組織化を試みた.しかし,行政領域に基づくこの試みは,住民側の既存の領域的な近隣組織と葛藤を生じ,結局後者が参加の主体となった.これは市政に参加する市民代表の性格を曖昧にし,市民の行政への要望や参加のあり方を局地化することになった.そこで,このように制度化した参加がいかなる実効性をもつのかを,近隣組織への加入率と提出された要望の実績によって評価したところ,街区ごとにかなりの差が認められた.そしてこの差には,入居時期と住宅事情,旧住民・就業産業状況等,世帯の類型・流動性の違いが一義的に対応ずることがわかった.また,市民の要望は,市民の生活環境評価の善し悪しや,宅地開発の形態を反映しているが,在来区域は制度の実効性に問題がある街区を多く抱えている.

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