日本口腔腫瘍学会誌
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臨床統計
角化囊胞性歯原性腫瘍の臨床的検討
野池 淳一柴田 哲伸植松 美由紀清水 武五島 秀樹長谷部 大地横林 敏夫
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2012 年 24 巻 4 号 p. 147-154

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抄録

角化囊胞性歯原性腫瘍(KCOT)は,錯角化を呈する重層扁平上皮に被覆された良性の顎骨腫瘍であり,そのもっとも重要な臨床的特徴は,手術後の再発率が高い傾向があることである。
今回われわれは,1983年から2010年にかけて長野赤十字病院口腔外科にて治療を行ったKCOTの63例について検討した。患者の平均年齢は40歳で,性差はみられなかった。発生部位は,下顎角部を中心に前方あるいは上方におよぶものが多かった。手術方法は59例に対して摘出術が施行され,10例に再発が認められた。開窓後摘出術を施行した2例,下顎骨辺縁切除術を施行した1例,下顎骨区域切除術を施行した1例には再発がみられなかった。全体として再発率は15.9%であった。再発の多くは,腫瘍に接触する歯根の周囲にみられた。手術から再発までの期間は平均4年3か月であった。
この調査の結果,KCOTにおいては他の顎骨囊胞よりも積極的な治療と,長期間の経過観察が必要であると思われた。

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© 2012 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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