日本イオン交換学会誌
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一般論文
海水中のセシウム除去のための吸着繊維の作製
岡村 雄介藤原 邦夫飯島 直樹正田 哲也鈴木 晃一須郷 高信清水 威板垣 龍人高橋 淳小野 孝之菊池 隆染谷 孝明石原 量小島 隆梅野 太輔斎藤 恭一
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2013 年 24 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

さまざまな接触方式で海水から放射性セシウムを高速除去できる不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維を作製した。まず,アニオン交換基をもつビニルモノマー,ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を,γ線を予め照射した 6-ナイロン繊維にグラフト重合した。つぎに,フェロシアン化物イオンを DMAEMA グラフト繊維に吸着させた。さらに,コバルトイオンとフェロシアン化物イオンとの沈殿反応によって繊維上に不溶性フェロシアン化コバルト(K2Co[Fe(CN)6]) を担持した。パイロット規模の反応器を使って,ワインド型のセシウム吸着繊維を 1 回で約 100 kg を製造した。繊維に対する海水の重量比を 100 にして,回分の接触方式によって,初期濃度 10 mg-Cs/L が 30 分後に検出限界(0.2 mg-Cs/L)以下に減った。また,吸着等温式は Langmuir 型の式に整理でき,海水中のセシウム濃度 1 mg-Cs/L のときの濃縮係数は 21000 であった。さらに,不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維を,空気中,500°C で,シアン化水素を発生させることなく焼却でき,減容可能であった。

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© 2013 日本イオン交換学会
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