語音ノ構音ニ關シテ行ツタPalatogramm竝ビニLinguagrammニヨル考察ニ引續キ, 更ニ母音ノ構音ニ關スル「レ」線學的ノ考察ヲ試ミタ。撮影條件トシテ最高電壓約70kV., 二次電流約400mA., 焦點「フィルム」間距離200cm., 放射時間0.08秒ヲ探用シタ。造影劑トシテハ次炭酸蒼錯ト「アラビアゴム」トカラナル泥状物ヲ用ヒ, 從來困難トセラレタ軟口蓋「プロフィル」及ビ舌溝等ヲ容易且明瞭ニ撮影シ得タ。コレニヨツテ明カニジ得タ所ハ次ノ如キ諸點デアル。
(1) 各母音ノ開口度ハ開顎角 (Ziwirner) ヲ以テ表ハストキ, 「ア」ニ最大, 「オ」, 「エ」, 「イ」, 「ウ」ノ順ニ狹イ。咬合セノ程度ハ「ウ」ニ最モ固イ。一般ニ開口度ハ英獨等ノモノヨリ狹イ。千葉民ノ成績ニ一致スル。
(2) 各母音構音ノ附屬管腔ノ狹隘部ハ「イ」ト「エ」トデハ前舌ト硬口蓋トノ間, 「ア」ト「オ」トデハ後舌ト咽頭後壁トノ間, 又「オ」デハ輕度ノ狹窄 (相封的映部) ガ舌背ト軟口蓋トノ間ニ生ズル。「ウ」デハ口腔ガ前後全體トシテ狹ク, 或ハ積極的ニハ狹窄ヲ作ラズ, 或ハ「イ」「エ」ノ峽部ヨリモ少シク後方ニ相封的峡部ヲ生ズル。口裂ハ「ア」「エ」「イ」「オ」「ウ」ノ順ニ狹ク, 「オ」ニ於テ特ニ積極的ニ狹メラルル以外ハ, 開口度ノ順ニ一致スル。但シ, 「エ」ト「イ」トデハ幾分力特ニ擴ゲラレルガ, 「ア」ト「ウ」rデハ單ニ開口度ニ從フ丈デアル。日本語ノ「ウ」ガuニ異ツテ居テa-o-u列ニ屬セヌモノデアルコトハ此點カラデモ明カデアル。
(3) 前部舌口蓋間隔ハ「ア」ニ最大デ, 「オ」, 「ウ」, 「エ」, 「イ」ノ順ニ狹イ。咽頭後壁ト後舌トノ間ノ距離ノ大サハ, コノ逆ニ, 「イ」及ビ「エ」ニ於テ最モ廣ク, 「ウ」ニ於テ之ニ次ギ「オ」及ビ「ア」デハ狹イ。舌會厭谷ノ廣サモ之ト略〓竝行スル。咽頭後壁ト會厭トノ間ノ距離ハ母音ニ從ツテノ著シイ差異ハナイ。
(4) 舌背ニ正中方向ニ生ズル舌溝ハ「イ」ニ最モ深ク, 「エ」之ニ次グ。但シ「イ」, 「エ」ニ於テハ後部ニノミ生ズル (干葉氏ニ一致, Gutzmannニ反ス) 。他ノ母音ニ於テハ溝ハ淺ク, 前後ニ亙ツテ生ズルコトガアル。
(5) 母音「ア」デハ, 鼻音トシテ氣ヅカヌ場合デモ, 鼻口間閉鎖 (軟口蓋閉鎖) ガ不完全ナコトガ意想外ニ多イ (歐人ノ所見ト一致) 。「オ」ニモ稀ニ存スル。
(6) 各母音ニハ夫々特有ナ附屬菅腔形ガアルガ, 一方ニ於テ個人的差異ガ少ヵラズ認メラレル。散ニ之ヲ各人ヲ通ジテ, 細部ニマデ亙ツテ固定的ナモノトシテ, 劃一的ニ律セソトスルノハ妥當デハナイ。が, 他方, 各個人ニ就テハ, 同一語音ニ對シテハ同一ノ附屬管腔形ヲ保持スル傾向ノ強イコトモ, 亦輕覗スベキデハナイ。