肺切除周術期の重要な合併症として不整脈があるが，心不全の指標であるヒト脳性利尿ペプチド（BNP）の関与に関する知見は乏しい．呼吸器外科周術期におけるBNPの推移，術後不整脈発症との関連を検討した．
2008年1月から2010年5月に当科の呼吸器外科手術例のうち術前後にBNPを測定した63例を対象とした．術前から術後第8病日までに血清BNPを複数回測定し，術前併存症・術後の不整脈出現との関連を検討した．
術前併存症では，心不全，虚血性心疾患，不整脈，腎不全，高尿酸血症，間質性肺炎例で術前BNPが高かった．周術期のBNP値は，術前BNP正常例は術後1週までに著明に低下したが，術前BNP上昇例は低下が鈍かった．術前BNP 100 pg/ml以下の54例の検討では，後の不整脈出現例は術翌日のBNP値と術前値との差が非出現例に比べ有意に大きく，この差が不整脈発症の指標となることが示唆された．
