生理心理学と精神生理学
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多肢選択反応時間課題におけるP300と内的モデル
入戸野 宏投石 保広中島 義明
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1994 年 12 巻 1 号 p. 29-37

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抄録

事象関連電位のP300成分は, 被験者が持つ環境についての内的モデルを更新する脳活動のあらわれであるといわれている.最近, Ullspergerらのグループが, P300の振幅変化を, Helsonの “順応水準説” の枠組みによって説明しようと試みている.本研究では, 記号的刺激の弁別課題を用いて, 彼らの仮説を検討した.5文字の連続するアルファベット (Q-U) を等確率でランダム順に呈示し, 被験者 (n=8) にそれぞれの文字に対して右手の対応した指で反応するように求めた.順応水準モデルはこのような課題には適用できないにもかかわらず, Ullspergerらの実験と同様に, P300振幅には “U字型” の変化が認められた.本実験で得られた結果を説明できるように彼らのモデルを拡張した.改訂モデルでは, 反応次元と関連した刺激評価プロセスで “基準点” が利用されており, P300振幅はその基準点と事象との隔たりを反映していると仮定した.

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© 日本生理心理学会
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