昨今の高齢化により大腿骨近位部骨折 (以下近位部骨折) の発生率は増加している。これに伴い,時期を隔てて対側を受傷する患者も増加傾向にある。その中で,近位部骨折患者の主な罹患疾患の1つである,変形性膝関節症に着目し,両側近位部骨折との関連性について検討を行なった。
対象は,2008年4月から2011年3月の間に近位部骨折を受傷し,当院にてリハビリテーションを実施した片側近位部骨折患者 (以下片側群) 234例,両側近位部骨折患者 (以下両側群) 17例であり,後方視的に情報収集を行なった。項目は,性別,年齢,受傷機転,対側受傷までの期間,両側近位部骨折の発生率,主な罹患疾患 (変形性膝関節症・認知症・脳血管疾患・眼疾患・呼吸器疾患・糖尿病・その他の骨折) の罹患率である。
結果,変形性膝関節症と両側近位部骨折との関連性が認められた。そのため,変形性膝関節症は両側近位部骨折受傷の一要因であることが示唆された。また,両側群の受傷機転は全例転倒であった。今後,一般的な近位部骨折の治療に加え,変形性膝関節症・転倒予防へのアプローチを行なっていくことの重要性が考えられた。