1994 年 26 巻 8 号 p. 895-910
QT延長症候群の発作時の心電図の特徴は,1)著明なQT延長(TU波の異常),2)発作を誘発する心室期外収縮,3)torsades de pointes(TdP)である.一般的には,この3つの心電図上の特徴は同じ原因で起こり,またその機序も同一であると考えられている.しかし,原因は同一でも発生機序が異なっている可能性がある.この発表では,各々の発生機序を最近開発された電極カテーテル押しつけによるmonophasic action potential(MAP)記録法を用いて検討した.
1)先天性QT延長患者群はisoproterenol投与前後,後天性QT延長群はdisopyramide投与前後で,MAP持続時間(MAP-d)を計測した.著明なQT延長(TU波異常)はMAP-d延長とearly afterdepolarization(EAD)発生とに密接に関連していた.
2)TdP発生時のMAPの記録が可能であった5名において心室期外収縮とMAPで記録されるEADとの関連性を検討した.全例でEADが認められ,EADの電位の大きさと期外収縮出現とに密接な関連性が認められた.
3)先天性QT延長愚者は著明なQT延長出現(isoproterenol 1μg/分)時,後天性QT延長患者はTdP発生時,MAP-dのバラツキを検討した.MAP-dのバラツキはTdP発生時に著明に増大していた.TdPの発生機序として撃発活動の他にreentryの可能性も考えられた.