ウイルス
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平成24年杉浦賞論文
ロタウイルス遺伝子操作系の開発とそれを用いた外殻スパイク蛋白質VP4の解析
河本 聡志
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2013 年 63 巻 1 号 p. 103-112

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抄録

 ロタウイルスは,冬季乳幼児嘔吐下痢症の病因ウイルスである.ロタウイルス胃腸炎により,開発途上国を中心に毎年約45万人の乳幼児が死亡している.先進国においても,ほぼすべての乳幼児が感染し,発症する.これまでに,多くのRNAウイルスにおいて遺伝子操作系(リバースジェネティクス系)が開発され,ウイルスゲノムを任意に改変することでウイルス増殖過程や病原性に関する多くの重要な知見が得られてきた.しかしながら,11本もの多分節2本鎖RNAをゲノムとするロタウイルスでは,過去10余年もの間,精力的な開発の試みが行われたにもかかわらず,如何なる成功も報告されていなかった.我々は,ロタウイルス増殖過程および病原性発現機構の研究を分子レベルで展開させることを目的として,ロタウイルスにおけるリバースジェネティクス系の開発を行ってきた.2006年にヘルパーウイルスを用いた系ではあるが,cDNAに由来するゲノム分節を有する組換えロタウイルスを作製することを可能にするリバースジェネティクス系の開発に世界に先駆けて成功した.このシステムを外殻スパイク蛋白質VP4に応用することで,異なる血清型由来の交差反応性中和エピトープをキメラに発現する組換えロタウイルスおよび,ロタウイルス感染性の獲得に重要な役割を果たすVP4上のトリプシン切断領域にフューリン様プロテアーゼ認識配列を導入した組換えロタウイルスの作製にも成功している.本稿では,これらロタウイルスにおけるリバースジェネティクス系の開発とその応用例,そして今後の展望を紹介したい.

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© 2013 日本ウイルス学会
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