2013 年 38 巻 4 号 p. 781-784
近年,癌性疼痛に対する新たな治療戦略としてフェンタニルパッチの有効性が認められている.今回,私たちは経口オピオイド製剤による疼痛コントロールが困難であったNSAIDS禁忌の乳癌骨転移症例に対し,フェンタニルパッチへのオピオイドローテーションが有効であった一例を経験したので報告する.症例は60歳代女性.2008年乳癌術後多発骨転移による疼痛コントロール目的に入院となった.出血性胃潰瘍の既往があったためNSAIDSは禁忌と判断,オキシコドン製剤経口による疼痛コントロールを開始,100mg/dayまで増量した.疼痛コントロール不良であり副作用としての嘔気,傾眠がみられたためフェンタニルパッチへオピオイドローテーションを施行した.以後,フェンタニルMTパッチ12.6mg/3daysにより疼痛コントロール良好となり,日常生活の活動性も向上した.本療法開始後5週間で癌性悪液質にて亡くなられたが,最期まで高いQOLが維持できた.