発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
保育者のはたらきかけと自閉症幼児の反応の縦断的検討
共同注意の発達との関連から
狗巻 修司
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2013 年 24 巻 3 号 p. 295-307

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抄録

乳幼児期の子どもとの相互交渉では他者からのはたらきかけが重要な役割を果たす。それは対人的相互交渉に質的な障害を示す自閉症幼児にとっても同じであるといえる。本研究では保育場面の縦断的観察を行い,対象となる自閉症幼児の共同注意の発達により観察時期を3つに区分したうえで,それぞれの時期における保育者からのはたらきかけとそれに対する対象児の反応についての分析を行った。その結果,3つの時期を通じて対象児の興味・関心に寄り添う形での遊び道具の操作や身体的な接触といった保育者のはたらきかけに対して「受容」の反応を示すこと,逆に対象児の注意を無関係なモノへと定位するはたらきかけに対して無視や拒否など「受容以外」の反応を示すことが明らかとなった。一方,3つの時期により保育者からのはたらきかけの回数に差がみられること,そして,それぞれの時期で保育者からのはたらきかけに対する反応が異なるなど,共同注意スキルの発達によりはたらきかけと反応との関係に質的な差異がみられた。これらより,自閉症幼児へのはたらきかけとして,子どもが示す興味や関心に寄り添うことと同時に,子どもの発達的なレベルに応じて寄り添いの質を変化させていく重要性が示唆された。

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© 2013 一般社団法人 日本発達心理学会
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