頸部気管の腺様囊胞癌(ACC)では,根治性と喉頭を含めた臓器機能温存のバランスが治療の課題となる。われわれは頸部気管ACCに対し,気管切除と二期的再建術,術後放射線治療により,喉頭温存治療を行った。症例は39歳女性,主訴は呼吸困難であった。頸部気管後壁から右側壁にかけて内腔に突出する腫瘍を認め,気管切開と同時に生検を行いACCと診断した。手術では輪状軟骨から第6気管輪の右側後壁を切除し,頸部皮弁を挿入して気管皮膚瘻を造設した。瘻孔は二期的に閉鎖した。病理学的に切除断端陽性であり,放射線療法を追加した。現在,治療後7年が経過し,再発を認めていない。本法は気管ACC治療の選択肢のひとつになると考える。