2013 年 38 巻 5 号 p. 944-949
原発巣の切除を施行した大腸癌893例を対象に,診療録からみたリンチ症候群(LS)の診断手順の第1次スクリーニングに用いられるアムステルダム基準Ⅱ(ACⅡ)あるいは改訂ベセスダガイドライン(rBG)の有用性と問題点について検討した.患者または第1度~第2度近親者に多い大腸癌以外の関連腫瘍では,胃癌が23例と最も多かった.1例もACⅡを満たさなかったが,146例(16.3%)がrBGを満たした.第1~第2度近親者の関連腫瘍の診断時年齢が正しく聴取されていれば,ACⅡ,rBG各々最大で3例(0.3%),87例(9.8%)が1次スクリーニングの候補として上乗せされることが判明した.リンチ症候群の1次スクリーニングには,第1度近親者の診断時年齢に留意したrBGを用いるのが望ましいと考えられた.