2013 年 38 巻 5 号 p. 1086-1090
症例は60代男性.2005年肛門管癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行.病理組織は粘液癌,pA,pN0,pH0,pP0,pM0,pStageⅡ,curAであった.術後観察していたが,2010年会陰部痛出現し,CTで骨盤内に長径90mmの多房性の充実性腫瘍を指摘され,局所再発と診断.再発病変に対して骨盤内臓全摘術を施行.術後大きな合併症なく第25病日に退院となった.病理診断にて粘液癌で初回手術後の再発を示唆,切除断端は陰性であった.再発手術後2年4カ月現在も無再発生存中である.大腸癌の組織型は多くが,高分化ないし中分化の腺癌であり,粘液癌の頻度は低い.粘液癌は分化度の高い癌に比べ,進行が早く,化学療法に抵抗性で,予後不良とされている.今回われわれは初回手術から5年を経て局所再発した粘液癌に対して骨盤内臓全摘術による治癒切除を行い,長期の無再発生存を得た症例を経験したので報告する.