2013 年 104 巻 6 号 p. 688-696
(目的) 今回我々はTAEが深在性腎損傷に対し有用であるか,またその有用性が病院の規模で差があるか否かを検討した. (対象と方法) 2001年4月から2011年4月までの日本医科大学付属病院の腎損傷42例,2001年4月から2009年4月までの大田原赤十字病院の腎損傷33例を対象とした.腎損傷分類はCTと術中所見をもとに2008年の日本外傷学会分類に準じ,主に治療法について検討した. (結果) 日本医科大学付属病院42例は平均41.6歳,男性36例,女性6例,分類はI型16例,II型11例,III型15例であった.治療は保存的30例,TAE 7例,手術5例で,TAE・手術はIII型に対し行われた.42例中5例死亡したが腎損傷単独の死亡例はなかった.一方大田原赤十字病院33例は平均46.6歳,男性25例,女性8例,分類はI型9例,II型12例,III型12例であった.治療は保存的24例,TAE 9例,手術症例はなく,TAEはII型1例とIII型8例に行われた.33例中8例死亡したが,腎損傷単独の死亡例はなかった.両施設でTAEは16例行われ,15例はIII型でありTAEが得られなければ腎摘をした可能性があり,TAEの有用性が確認された. (結論) 病院規模によらずIII型に対してTAEが多く行われており手術症例を減らす上でもTAEは有用である.