景観生態学
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原著
ニホンザル(Macaca fuscata)における農地選択の季節変化
望月 翔太村上 拓彦芝原 知
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2013 年 18 巻 2 号 p. 159-171

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抄録

近年,野生鳥獣による農作物被害が増加している.本研究では,新潟県新発田市に生息する,農作物に依存したニホンザルの1群れを対象に,季節による生息地利用と農作物被害発生要因の変化を評価した.2006年から2008年の間に,ラジオテレメトリーによって取得された群れの位置情報を使用した.また,生息地の土地被覆を抽出するため,ALOS/AVNIR-2画像を用いた.両データから,まず群れの季節ごとの生息地利用をManlyの資源選択性指数を用いて明らかにした.また,時期ごとの農作物被害発生要因を評価するため,100 m×100 mメッシュを用いて環境要因を抽出し,ロジスティック型の一般化線形混合モデルを用いて被害発生に関係する環境要因を明らかにした.その結果,生息地利用に関しては,月によって異なり,8~11月に農地への選好性が高まった.群れは農地を採食地として利用しており,群れの利用地域はその時期の利用資源の位置に影響を受けると推察された.8月は森林への選好性が低く,11月は住宅への選好性が見られたことから,森林資源が少なくなる夏期と冬期には特に農地への依存が高まると考えられた.季節ごとの被害の有無と,被害地と資源との関係を推定した一般化線形混合モデルの結果,時期ごとに最適モデルに選択される変数は異なった.森林からの距離は全時期において選択され,重要な被害発生要因であるといえた.森林からの距離以外では,それぞれ時期ごとに利用可能と考えられる資源が選択され(春期:トウモロコシ・畑地・草地,夏期:トウモロコシ・畑地,秋期:カキ),利用資源の空間分布が被害発生に影響すると考えられた.季節ごとに被害発生要因は変化することから,季節ごとの被害に対応した対策を行うことで被害軽減につながる事が推察された.

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© 2013 日本景観生態学会
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