2014 年 67 巻 3 号 p. 168-172
人工肛門閉鎖術は比較的低侵襲の手術ではあるが,術後にBacterial translocationによるものと考えられる敗血症の1例を経験したので報告する.症例は61歳,男性.3ヵ月前に直腸癌に対して超低位前方切除術,一時的回腸人工肛門造設術を施行し,今回人工肛門閉鎖を行った.第2病日に食事を開始したところ,悪寒・戦慄および発熱が出現し,第6病日に敗血症性ショックをきたした.種々の検査にて明らかな感染源は特定されなかったため,Bacterial translocationをきたし,敗血症に至ったと考えられた.人工肛門閉鎖術後は廃用性萎縮している人工肛門の肛門側腸管に食物が通過した際にBacterial translocationをきたす可能性があるため,注意が必要であると考えられた.