2013 年 69 巻 6 号 p. II_371-II_382
近年,原油等の化石燃料の価格高騰は農業活動に深刻な影響を及ぼし,生産者の利益を圧迫している.しかし,生産者の高齢化や減少が進むなか,農業経営の体質強化を図る取り組みが困難な状況である.また,低炭素設備や省エネルギー技術の導入を通じた省エネルギー対策も十分に進んでいるとは言えない.そこで本研究では,施設園芸農家の実態調査に基づいて,農作物生産におけるエネルギー・物質フローを解明した上で,LCAの手法を用いてGHG排出量を推計した.さらに,栽培管理プロセスの加温機更新に関して7つの比較ケースを設定し,設備更新とバイオマス資源利用によるGHG削減ポテンシャルを評価した.その結果,栽培管理プロセスにおける施設加温でのエネルギー起源GHGの排出抑制が重要となること,GHG排出量削減では地域バイオマス資源の燃料利用が効果的であること,設備更新にあたっては,国などからの補助金や制度を活用しても投資回収が長期化することが明らかになった.